ダ・ヴィンチ - ワラウ

「今と重なる!」奈良時代に流行した疫病、不安と恐怖、人間の本質を描いた話題作が文庫に

2020年11月6日

  • 本日発売の「文庫本」の内容をいち早く紹介!
    サイズが小さいので移動などの持ち運びにも便利で、値段も手ごろに入手できるのが文庫本の魅力。読み逃していた“人気作品”を楽しむことができる、貴重なチャンスをお見逃しなく。

    《以下のレビューは単行本(2017年11月刊行)内容の紹介です》


    『火定』(澤田瞳子/PHP研究所)

     こんなにも“今”と重なる小説があるだろうか。2017年下半期の直木賞候補作となった『火定』(澤田瞳子/PHP研究所)の舞台は、奈良時代。民を救うため、というよりは、皇后の兄である藤原四子の威光と慈悲を示すために建てられた施薬院は、出世とは程遠いために官の足が遠のき、町医者だけで成立している。そこに新羅から持ち込まれた疫病――天然痘が流行し、都中がパニックになるなか奮闘する医師たちの物語だ。


     医者になんかなりたくないし、立身出世のためとっとと辞めたい、と不満をくすぶらせている下級官僚の蜂田名代(はちだのなしろ)。本書は、不平たらたらの若き青年の成長譚であると同時に、皇族を診療する職を得ながら同僚に陥れられ牢獄に入れられ、医師としての矜持を捨てた猪名部諸男(いなべのもろお)を対比的に描くことで、医療とは何かを問う物語にもなっている。

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