ダ・ヴィンチ - ワラウ

“天然塩”“VTRの演出”…「本物と偽物」の線引きとは? 物事の価値と真価を問う問題作

2020年11月21日

  • ホンモノの偽物
    『ホンモノの偽物』(リディア・パイン著,菅野 楽章訳/亜紀書房)

     最近になって、「天然塩」や「自然塩」といった用語が塩関係の業者において使用を禁止されていることを知った。調べてみたら、2008年に消費者へ公正かつ正直な商品表示を行なうために設けられた「食用塩公正競争規約」で定められているという。なるほど確かに、天然の海水を用いたとしても濃縮する段階で人の手が加わるし、自然の鉱床から採掘される岩塩も粉砕したり洗浄したりするのだから、野草を摘んだかのように呼ぶのはおかしな気がする。そんなことを考えていると本の神様が引き合わせてくれるのか、単に似たような問題に関する本が目につきやすくなるだけなのか、『ホンモノの偽物』(リディア・パイン:著、菅野楽章:訳/亜紀書房)に出逢った。


     序章に古代ローマの風刺家ペトロニウスの「世界は欺かれることを望んでいる。ならば欺かれるがよい」という言葉を引用している本書には、八編(+序と結の二編)の物語が載っている。そのいずれも著者によれば、「真正性に関する問いかけをかき立てるもの、単純明快な答えがないと思うものを選んだ」とのことで、読者はその迷宮に引き込まれ、否応なく自身の考え方や価値観を試されるだろう。

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