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シニア層に代わって消費の主役となりそうな「Z世代」。攻略のカギは「チル」と「ミー」?

2021年4月26日

  • Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?
    『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(原田曜平/光文社)

     管理職の多くが新入社員に頭を抱える時期だ。フレッシュマンを宇宙人認定しても、仕事ははかどらない。世代が変われば、性質も変わる。どうやら、今の新入社員は「Z世代」(ジェネレーションZ)と呼ばれる世代らしい。彼ら彼女らの性質とそれを培ってきた背景を知れば、頭を抱える事態を減らせるかもしれない。

    『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(原田曜平/光文社)は、Z世代を「10代前半から25歳くらい」だと説明する。「ジェネレーションZ」はアメリカを中心とした欧米諸国で使われ始め、諸説あるが1960年代初頭または半ばから80年頃までに生まれた「ジェネレーションX」、そして80年代序盤から90年代中盤または2000年代序盤までに生まれた「ジェネレーションY」に続く世代として命名された。海外では、2019年時点で世界の全人口77億人の32%を占めるほどジェネレーションZは多く、必然的に市場のメインターゲットとして注目されている。

     ひるがえって、日本ではご存じのとおり少子高齢化で若者の数は少なく、Z世代は、2018年の総務省の人口統計を基に10歳から25歳までの人口を計算すると1886万人ほどで、総人口の約15%に過ぎない。Z世代は市場のターゲットとして注目されてこなかった。代わりに重宝されてきたのは、数が多いシニア層だ。昨年の総務省の推計によれば、65歳以上のシニアは総人口の28.7%。Z世代の倍近く多い数字であり、今後も伸びると見られている。しかし、本書は、今後の日本ではシニア層に代わってZ世代が注目されるようになる、と予想する。

    「平成の高齢化」と「令和の高齢化」には、質的に明確な違いがあるという。平成に増えた「若くてお金を使う」アクティブシニアも、人である限り歳を取る。令和になると高齢者の高齢化が進み、後期高齢者、つまり“アクティブでないシニア”が増大する。平成に比べると消費者としての高齢者の魅力が減少することに、令和元年の前後数年で多くの企業が気付き、ターゲットチェンジを図ろうとしている、と本書は述べる。

     ここで登場するのが、Z世代だ。戦後からずっと「消費意欲が旺盛でアクティブな若者」が消費のメインターゲットだったが、数も少なく「消費意欲と元気がない」Z世代を含む若者は市場から見放されてきた。しかし、実はZ世代に限っていえば、消費意欲がないわけではない、と本書。人生の大半を「平成不況」下で生きてきたZ世代の前世代である「ゆとり世代」は、企業がターゲット外しにより商品に対する興味や消費意欲を養ってこなかったせいもあり、車、酒、タバコ、テレビ、新聞、海外旅行など、あらゆる「○○離れ」を起こした。しかし、Z世代が生きてきた大半の時期は「アベノミクス経済」下。賛否はあれど、雇用状況は大幅に改善した。人数が少なく、雇用情勢が比較的良い社会の中で、Z世代は不安や競争にかられることなく重宝されてきたと同時に、両親・祖父母・叔父叔母の「8ポケッツ」も利用しながら、ある程度は買いたいものを買ってきた。

     本書によると、そんな彼らを理解するキーワードは2つある。「チル(chill)」と「ミー(me)」だ。「チル」は、元々はアメリカのラッパーたちのスラングで、日本語では「まったり」の意味に近い。「自室でネットフリックスを見ながらまったりする」など、マイペースに居心地よく過ごすスタイルがウケるようだ。

     もうひとつの「ミー」は、強い自己承認欲求と発信欲求のこと。SNSの先駆けである「ゆとり世代」は、「新村社会」「mixi八分」といったキーワードが示すように、SNSに翻弄された。しかし、その結果を受けて「ブロック機能」「鍵機能」など、SNS前時代の負の部分が改善された居心地良いSNSに浸ってきたZ世代は、SNSと上手く付き合ううちに自己承認欲求と発信欲求をより強く膨らませてきた、という。

     すでに「チル」と「ミー」を満たすブームは、Z世代を中心に起きている。例えば、「映えピク」。海水浴をメインとせず海辺でのまったりとした過ごし方を撮影・公開する、芝生の庭などを備えるカフェでの時間を撮影・公開する、など「インスタ映えするピクニック」の様子を共有する。また、Z世代の女子は、マスクをしていても「盛れる」メイクや、マスク自体を「盛る」といった「マスク盛り」に熱心だ。『鬼滅の刃』はZ世代からブームが起き、Z世代の親も巻き込んで大成功した。本書では、Z世代をターゲットにして成功している商品の例をいくつも見ることができる。

     このように、消費のターゲットとして注目されているZ世代だが、では彼ら彼女らが自分の部下として入社してきたら、どのように接すればよいのか。やはり、「チル」と「ミー」であるようだ。

     Z世代は叱られず、周囲から可愛がられて育った。叱ってばかりの上司はもちろん、叱らずとも「俺の背中を見て学べ」という昭和スタイルの上司も好かれない。本書によると、「9割褒めて」「残り1割は否定にならないように“改善提案”」をすれば、Z世代は耳を傾け、成長してくれる。また、Z世代は周囲やSNSで多くの「いいね」を受けとってきたことから「プチスター」を気取り、「プチ万能感」を抱いているため、仮に愛があっても「いじり」は受け付けない。本書は、「あだ名禁止」の企業を例に出しているが、これはZ世代社員にパワハラと捉えられる可能性があるための措置だと紹介している。休日は仕事以上に貴重なまったりする時間であるため、休日出勤などもってのほか。

     Z世代の性質の是非を語っても、現実は変わらない。管理職が理解に努めることで、共存共栄が図れる、というものだ。

    文=ルートつつみ

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